日本財団 図書館


 

5 人口と世帯の変容がもたらすもの

欧米のように移民や労働力の移動による人口移動がないわが国では、少子化、高齢化に加え、家族形成の多様化という傾向が今後も続き、かつて経験したことのない人口変動に直面しています。
長寿化と出生率の低下により人口ピラミッドも、ピラミッドというよりはつり鐘型またはひようたん型となってきており、第一次ベビーブームの団塊の世代と第二次ベビーブームの団塊二世の2階級で膨らんでいます。平成32年(2020)には団塊の世代が70〜74歳となり、団塊二世の世代も45〜49歳という超高齢化社会となり、平成37年(2025)には65歳以上人口が全人口の4分の1を占めると推計されています。(図11)
このように、人口および世帯の高齢化が進むと、年金や健康保険などの社会保障負担も大きくなり、家族形成の変容により家族の扶養機能も低下していきます。
わが国の社会保障制度は工場労働者を対象とする健康保険制度に始まり、農業者や自営業者を対象とする国民年金制度、被用者のための厚生年金保険制度が整備され、昭和36年(’61)には国民皆保険・皆年金体制が実現しました。
社会保障制度が経済成長の成果を享受するなかで、高度経済成長期における社会保障制度の整備、拡充とともに社会保障給付費総額も伸び、平成5年(’93)現在では国民所得372兆7,500億円に対し、社会保障給付費総額は56兆7,961億円となっており、国民所得の15.2%が社会保障制度を通じて国民に分配されていることになります。(図12)
また、社会保障給付費の部門別の推移をみると、年金制度の成熟化とともに高齢化が進展したため、年金の伸びが特に目立ち、昭和56年(’81)に医療を抜いて社会保障給付費の中で最大の割合を占めるに至って以降、現在に至るまで社会保障給付費の過半を占めてきています。
さらに人口構成の高齢化によって、労働力の供給を示す労働力人口も頭打ちになってきます。
労働人口とは、実際に働いている人と働く意思をもっているにもかかわらず失業している人の合計であり、この労働力人口の人口に締める割合を労働力率とよんでおり、いわば労働参加率というべきものです。
これは男子では25〜59歳において高原状に90%を越える水準で高く、高齢者と若年者で低くなります。また女子ではやはり高齢者と若年者で低いのは同じですが、育児・出産の年齢期で谷状に低下します。
雇用をめぐる状況は厳しく、平成3年度(’91)には2.1%であった完全失業率が、平成7年(’95)中には3%を超える水準で推移しています。
労働力の高齢化とは、この労働力の低い高齢層へ人口のウエイトが移っていくいくことであり、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION